Act0-1:イングランド三分の計

 1282年以来イングランドの支配下に入ったウェールズだが、その後一度だけ、独立まであと一歩というところに近づいたことがあった。それが15世紀初頭の、オーエン・グリン・ドゥールの乱である。オーエンはその優れた知略で、イングランドの内紛に乗じて一時はウェールズ全域を糾合し、「ウェールズ大公」を名乗った。一説によれば、オーエンは、ノーサンバランド伯パーシー・マーチ伯モーティマーと共に、イングランドを三分して統治する計画を持っていたという。

 だが、オーエンはイングランドとの決戦に敗れ、反乱はわずか数年で鎮圧されてしまう。そしてウェールズ人は以前にも増して苛烈な支配を耐え忍ぶことになった。しかし、ウェールズ人たちは独立を諦めなかった。心あるものは密かにイングランドへの復讐を誓っていた。

 そんなオーエンの遺志を継ぐものの一人に、北ウェールズの小領主にして「ウィン家の若君」と呼ばれるイヴァン・アプ・ロバートがいた。

開始時の方針

 下が開始時の周辺地図。ウェールズは構成州も中核州も首都1州のみの典型的な弱小諸侯、しかもイングランドの3州と接しており逃げ場がない、という状況から始まります。ちなみに所持文化はケルト(ゲール)のみ。

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ゲーム開始時のブリテン諸島(1419年)
国内政策
ウェールズが統一勢力ではない(州内の封建小領主たちがバラバラにイングランドに忠誠を誓っている)状態を表現するために、スライダーは「地方分権」側に振り切れています。君主といっても、名実共に単なる一地方領主という扱いですね。そこで、ひとまずはロールプレイの一環として、ウェールズ州内統一のため、何をさておいても「中央集権」の向上に努めることに。本当はもっと即効性のある「質重視」「陸軍主義」あたりがいいんだろうけど。
経済
ウェールズ州自体は人口10,000人に産物は鉄と、それほど貧しくはありません。兵も5,000人と小国相応。ひとまずはセオリー通り、国庫に金を入れて50D貯め、税務所を建てましょう。(建てても年5Dくらいしか収入ないけど)貿易は、Lv3くらいになるまであまり儲からないので無視。
技術
腐っても欧州国ということで、技術レベルがすべて1あるのがありがたいところ。しかもLatin技術グループのため終盤まで隣国ボーナスは潤沢なので、陸軍/海軍技術はほうっておいてもそれほど他国と差がつきません。(ただし当然ながらフランスなど一部大国とは相当差がつきます。)そのため、技術開発は陸軍レベルのCRT切換期を除き、最後までインフラ・貿易を中心にしました。ただ、後で考えると、小国志向だったのだからとりわけ貿易を強化すべきだったかも。
外交
ゲーム開始時点ではフランスと百年戦争中。とはいえお互い艦隊もないので、実際の戦闘はまず起きないでしょう。それよりも問題は、宗主国&同盟国であるイングランドとの関係。開始時点では+150と良好ですが、ウェールズはイングランドの中核州だし、イングランド側の歴史イベントでもどんどん下がっていきます。なので、属国解除→宣戦布告の滅亡コンボを食らわないうちに、何らかの対策を取ることが絶対条件。とりあえず、大陸は一切無視して、イングランドとの関係維持を最優先に。

 といった状況を踏まえて、税務所を建てた後は、イングランドに一発併合されないために(また宣戦布告をためらわせるために)どこでもいいから領土を増やすことが絶対方針となるでしょう。

 とはいえウェールズにはウェールズ以外の中核州がなく、アイルランドや大陸に行くには戦力が足りない(そもそも船がない)。となると当然、行き先は……陸続きのスコットランド

Act1-1:イヴァン・アプ・ロバートの野望

 イヴァンの家は今でこそ山間の貧しい村でひっそり暮らしているが、元々はウェールズ王の血を引く、高貴な家柄だった。イヴァン自身も、小さな頃からウェールズの誇りや王族としての威厳を、母親に厳しく叩き込まれて育った。

「俺の家をいずれ、全ウェールズを統べる王家としてみせる」

密かにそう決意したイヴァンは、筵を織ったり買ってきた茶を母親に捨てられたり裏庭の桃園で義兄弟の誓いをしたり武芸と学問に打ち込んだ。彼の評価はいつしか、近在で並ぶものなき「優秀な若君」として高まっていた。

 おりしも西暦1420年、イングランド王家とフランス王家間の争いがここブリテン島にも波及していた。伝統的にイングランドと敵対するスコットランドは、不安定なイングランドの内情を見透かし、しばしば北辺の国境を脅かしていた。だが、イングランドは大陸での戦いに手一杯だったため、北辺を守る人材を、平定して間もないウェールズに求めた。

 ほんの数年前、独立を力づくで奪ったくせに、今度は「スコットランドと戦え」と来る。当然、ウェールズの領主たちは、こうしたイングランドのやりくちに反発した。中には「スコットランドの諸侯と手を組み、イングランド王家に挑むべきだ」と息巻くものもいた。

 だが、イヴァンの考えは違っていた。彼は実際的にものを考えられる人間だった。

「どうせ、スコットランド人どもにイングランドを倒すことはできない。ならば、この状況をせいぜい自分のために利用させてもらおうじゃないか」

 イヴァンは志を同じくする近隣の豪傑たちと語らい、騎兵1000を用立てると、あえてイングランド側へ立っての参戦を申し出た。スコットランドの領地を切り取り、自らの野望の糧とするために。

いかにしてスコットランドを寡兵で占領するか

 というわけで、まずはスコットランドの領土切り取りを目指します。

(実は初回プレイ時に、スコットランドと組んでイングランドと最初期に決戦するという戦略も試したのですが、1424年以降にスコットランドがイングランドにあっさりイベント属国化されてしまうことを知らず…その後すぐに征服されてしまいました。)

 とはいえ、指揮官もおらず、おまけに養兵限界が9,000人しかないウェールズでは、スコットランドとまともに戦っても勝てない。ので、ちょっとトリッキーな手を使いました。


 まず、ゲーム開始時点で持っている部隊のうち騎兵は1000あるのですが、この騎兵だけをスコットランド国境のノーサンバーランド州に置いた上で、同盟国イングランド様を誘ってスコットランドに宣戦布告します。

 すると、イングランド様は数万の兵であっという間にスコットランド軍を粉砕し、首都ロージアンを占領します。その後、次の州に移動するときが勝負。イングランド様はストラスクライドかグランピアンのどちらかに部隊を動かすので、方向を見極め、すかさず自軍の騎兵部隊を同じ州に移動させるのです。すると、歩兵と騎兵の移動速度差により、自軍がわずかに先着して占領の優先権を得られる、というわけ。スコットランド軍がいても、イングランド様の同盟軍がすぐに駆けつけてくれるので怖くありません。あとは占領→同盟主イングランド様が勝手に講和するのを待つだけ。


 今回はたまたま、開始早々スコットランドから侮辱を受けたので、それを開戦理由にしました。(たまたまといっても、スコットランドは見境なしに小国を侮辱することが多いようですが)おそらくは1回で1州しか取れないので、時間優先で考えて開戦理由なしで宣戦布告してもいいかもしれません。どうせ小国のうちは安定度はすぐ回復するし、Badboyレートもまあ許容範囲に収まります。

 そして…

ウェールズが3州を領有(1439年)

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 スコットランドと2回の戦争で2州を割譲させた後の画像。(まだ中央集権は2なので、画面上ではウェールズ一色でも実際にはいろんな領主の領地が交じり合っているはず。まあゲーム中では同じだけど。)

 2回目の戦争はイングランドの宣戦布告に乗っかることができ、Badboyレートはここまで6で収まっています。百年戦争イベントがイングランドで連発しますが、なるべくそれには関わらないようにして(同盟不履行も辞さず)地力を蓄えつつ、イングランドと同盟を結んだり解消したりして、かなり綱渡り。イングランドに宣戦布告されたら終わりですから。

 ともあれ、一発併合を防ぎ、かつイングランドにも簡単に手を出せない規模には成長できて、ほっと一息。

Act1-2:グウィディル家、スコットランドに地歩を築く

 1438年末、イングランドはスコットランドを平定した。もちろん、イヴァンらウェールズ小領主の功績は殊に大きく、一番槍をつけるためには自殺的な突撃も辞さないウェールズ騎兵の勇猛さは、畏怖と共に広く語られることとなった。

 そうした武勲を称えられ、イヴァンはイングランド王より、スコットランドの領地を賜った。小さな領地ではあったが、ウェールズ内においてイヴァンの家名グウィディルを高からしめたという意味では、計り知れない価値を持っていた。イヴァンは王の前で臣下の礼を取りながら、小さな笑みをこぼした。その真意に気づいたものは、誰もいなかった。

 だが、イヴァンがこれ以上、スコットランド王家の領地を切り取るわけにはいかなかった。すでにスコットランド王家は、イングランド王家に臣従させられており、またこれ以上ブリテン島内の微妙な勢力均衡を崩すこともためらわれた。

 となれば、次の目標は決まっている。豊かではないにせよ、海という天然の防壁に囲まれているため策源地としては最適で、なによりもケルトの末裔としてルーツを同じくする者たちが住んでいる島――アイルランドに、イヴァンの目は注がれていた。

ウェールズ とほほ人物列伝#1

 と、上では格好よく書いた(つもりの)人々ですが、調べてみるとこれが実際には…

 実は、AGCEEPに出てくるウェールズ関連の人物は、どいつもこいつも一癖あるとほほな連中ばかり。これはこれで面白そうなので、AARの進展に合わせて史実上の彼らを紹介してみることにしました。

イヴァン・アプ・ロバート(Ifan ap Robert)?〜1469?

 18世紀に北ウェールズで一、二を争う大地主となった、グウィディル准男爵ウィン家のご先祖様。北ウェールズに存在したグウィネズ王国(クネッダ家)最後の王オーエン(〜1170)の9代後の末裔で、妻エレンは最後のウェールズ王ルウェリン(〜1282)の子孫。しかも、ウェールズ版ロビン・フッドとして民話で人気のトム・ショーン・カティ(英語)の先祖にも当たる…と、ここまで来れば、さすがに誰もが怪しく思うはず。

 実はこの人、実在したかどうかさえ疑問な人。のちに登場する17世紀の子孫がさる事情で、ウェールズ王家につながる家系図をまるまる偽造してしまったんです。そのため公式な記録は一切残されておりません。

 不確かな記述では、1460年ごろに廃墟と化していたスラーンルウスト近くの城(というか砦)を借り受けたようですが、となるとよくて地元の豪農か、ヘタすると百年戦争くずれの山賊団の頭目だったんじゃないかと。

 ゲーム中では初代君主Ieuan Iとして登場し、在位1404〜1469。能力値は「外交5/内政4/軍事5」と、まあ凡庸。

オーエン・グリン・ドゥール(Owen Glyn Dwr)1354?〜1416?

 ゲーム中には、のちにイベント説明文でちょっとだけ登場。本編にあるとおり、ウェールズ南部の王家の由緒正しい末裔で、最後の大規模反乱の指導者としてウェールズでは国民的英雄です。

 ただ、14世紀にはイングランド王の家臣として戦っているし、反乱にしても近隣の領主とのいざこざがだんだん大きくなり、ついにはイングランドの宮廷内部の内紛やフランスの思惑と結びついて、ウェールズ王の自称まで行ってしまった…という展開を見ると、なんとなく成り行き感が漂う人ではあります。

 1404〜1408年ごろウェールズのほぼ全域を支配しますが、その後は敗戦に次ぐ敗戦。最期は捕らえられたわけでもなく、ウェールズの山奥に逃げ込んでひっそり晩年を暮らしたらしく、1412年以降は歴史から消えています。

 シェイクスピアの『ヘンリー四世第一部』には、パーシー・モーティマーとともに反王家側のリーダーとして「オーウェン・グレンダワー」という英国風表記で登場しますが、妖術を使って幽霊を呼び出したりそれをからかわれたりと、明らかにお笑い担当。三国志でいうと黄巾賊の張角みたいな感じでしょうか。


 ちなみに、プレーヤーが担当するウェールズ君主たるグウィディル准男爵ウィン家は、ウェールズ北西部のスラーンルウスト Llanrwst(英語。リンク先ページ右側の地図参照)に領地を持っていました。まわりの風景なんぞ見てみると、ど田舎中のど田舎ですね。




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Last-modified: 2007-03-05 (月) 08:26:58